科学の散歩道
現代物理学入門
区切り線
科学の散歩道
数理科学の歩む道

科学の研究には、大きく分けて2つのアプローチがある。 ひとつは、観測や検証などを通して現象を解明しようとする「実験」で、もうひとつは、論理的な思考を重ねて物事の本質を明らかにしようとする「理論」だ。 これらのアプローチが両輪となって力を合わせることで科学は前進する。

前者の実験的なアプローチのほうは見た目に分かりやすい。 そこに実在する現象を観察したり検証したりするわけで、もちろん理論的なアプローチから得られた結果に助けを求めることはあっても、すでに形のあるものを対象とする。 実験から得られた結果は、測定の精度や誤差の範囲内で正しいと信じなければならない。

それに対して、理論的なアプローチというのは、模型(モデル)を組み立てることだと言える。 模型の基礎となる基本的な前提から論理的な思考または推論を重ねて結論を引き出す。 当然のことながら、このような手順は概念や論理の上に存在するものなので、文字や記号を使って初めて形になる。

数理科学では、模型の基礎となる基本的な前提のことを「公理」という。 公理から導かれる結論は、その模型の性質を表す。 アインシュタインの相対性理論を例に取ると、「どの観測者から見ても真空中の光の速度は一定である」という公理から「すべての物体は真空中の光の速度を超えて運動することができない」という結論を引き出している。

ただし、模型の価値については、その目的ごとに異なる評価を受ける。 最も自由度の大きな純粋数学の場合は論理構造の豊かさに価値があると考えるが、理論物理学の場合は物理現象の説明に使えるかどうかで判断され、そうでない模型はどんなに美しくても価値がない。

理論物理学に限らず、社会現象を記述する「数理社会学」や経済現象を記述する「数理経済学」を例に取ってみても、どのような公理を採用するかで模型の価値が左右される。 これらの現象の説明に使うためには、実験的なアプローチから得られた結果を意識せずにはいられない。

21世紀の科学は、学問的な興味の対象が広がっていくと同時に、それぞれの専門領域がどんどん掘り下げられていくように見える。 どんな分野であっても、適切なモデルを提案するという数理科学の果たす役割は大きい。

区切り線
科学の散歩道
Copyright (C) 2003 数理科学研究会 All rights reserved.