科学の散歩道
現代物理学入門

素粒子物理学編
原子核の謎

前回の話で、原子核の構造まで進んだ。 原子の中心に位置する原子核は、陽子と中性子で構成されており、それらがぎゅうぎゅう詰めにされた状態で存在する。 今回は、この様子をもっと詳しく調べてみよう。

正の電荷をもつ陽子の運動は、クーロンの法則に支配されている。 クーロンの法則とは、電荷をもっている粒子同士に働く力(その力のことをクーロン力と呼ぶ)の向きと大きさを表現したものだ。

例えば、正電荷と正電荷のように同じ符号の電荷をもつ2つの粒子の間には、反発する力(斥力)が働く。 逆に、正電荷と負電荷のように反対の符号の電荷をもつ2つの粒子の間には、引き合う力(引力)が働く。 そして、クーロン力の大きさは、2つの電荷量の積に比例し、その間の距離の2乗に反比例するというわけだ。

逆2乗の形は重力と似ているが、クーロン力には引力だけでなく斥力もあることが重力の場合とは異なる。

原子核の中に閉じ込められている陽子の場合、その距離が互いに接近しているので、クーロン力は非常に大きい。 すなわち、陽子は互いに反発し合い、原子核の外へ飛び出そうとしているわけだ。 しかし、実際には、陽子はおとなしく原子核の中にとどまっているように見える。 それはなぜか?

例えば、ヘリウムの原子核は、2つの陽子と2つの中性子で構成されている。 電荷のない中性子には電気的な力が働かないにしても、2つの陽子には大きな斥力がある。 放っておけば、ヘリウムの原子核はバラバラになってしまうはずだ。

この疑問を解決するため、中性子の存在に着目して研究を進めた物理学者がいた。 確かに、陽子だけで構成される原子核は、水素原子以外には存在しないし、中性子が何らかの役割を担っていると考えるのは極めて自然だ。 しかし、未だに知られていない新しい粒子が媒介することによって陽子と中性子が固く結び付けられているという発想は、当時の湯川秀樹を置いて他にはいなかった。

次回から、湯川秀樹の中間子論を見ていくことにしよう。


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