原子核の束縛から離れた中性子は、実は不安定な粒子である。 陽子と中性子の質量にほとんど違いはないが、わずかばかり中性子のほうが重い。 自由に運動できる中性子は、約15分の平均寿命で陽子と電子という2つの別の粒子に姿を変える。
しかし、原子核の中にある中性子は、ベータ崩壊の場合を除き、自由に崩壊することはない。 なぜなら、核子同士は常にパイ中間子を交換し合っているからだ。 具体的に分かりやすく言うと、陽子が中性子とパイ中間子の2つの粒子に崩壊し、そのパイ中間子が別の中性子と合体して陽子となる過程が繰り返し行われている。
これは、原子核で働く「強い力」が効いていることを示している。 一般に、力(相互作用)は空間にポテンシャルの場をつくる。 原子の場合、「強い力」と電磁力があるので、そのポテンシャルは2つの力によって作られるポテンシャルの和になっている。
核力のある原子核の内部のポテンシャルは、小さくて深い穴である。 陽子や中性子は、このポテンシャルの穴に落ち込むことで、原子核としての安定性を保っている。 ただし、この穴に入る核子には定員が決まっていて、原子番号や質量数の大きい原子が存在しない理由を説明している。
さて、原子のポテンシャルは、原子核の外側に高い壁を作っている以外は、その外側では通常のクーロン・ポテンシャル(電磁ポテンシャル)の形をとっている。 このポテンシャルの壁を乗り越えるには、相当のエネルギーが必要だ。
しかし、量子力学を知っていれば、必ずしもポテンシャルの壁を乗り越えなくてもよいことが理解できる。 ポテンシャルの壁は、トンネルを掘って抜け出ればよい。 これは「トンネル効果」のひとつで、原子核が自発的に崩壊する様子を教えてくれる。 もちろん、現象の発生は確率的な予測にとどまる。
放射性原子核からアルファ粒子(ヘリウムの原子核)が飛び出したり、大きな原子核がより小さな2つ以上の原子核に分裂する現象は、このようなメカニズムに基づいている。
