原子番号の大きい不安定な元素では、原子核を構成するいくつかの陽子と中性子のなかで、陽子が中性子に化けたり、あるいは中性子が陽子に化けたりといったダイナミックな現象が見られる。 このとき、大きなエネルギーをもった電子やニュートリノが原子核から飛び出し、私たちの目の前に現れる。
放射性物質から飛び出す電子をはじめて見たラザフォードは、この放射線のことをベータ線と呼んだ。 まだ、その放射線の正体が電子であることを知らない100年以上も前の話だ。 また、このような機構で原子核の種類が変わることをベータ崩壊という。
1931年、ベータ崩壊の現象を注意深く研究していたパウリは、中性子が陽子と電子に化ける過程で、エネルギー保存の法則が破れているのではないかということに気づいた。 精密な実験を繰り返してみても、物理学の基本的原理であるエネルギーの保存が成り立っていない。
しかし、パウリはニュートリノという(当時は)未知の素粒子がエネルギーを持ち去っているという仮説を立てることによって、エネルギー保存の法則のほうを守った。 彼の仮説は、確かに仮説に過ぎなかったが、1950年代にニュートリノの存在が実証されると、快く理論に受け入れられた。
ニュートリノは、ベータ崩壊のように原子核に関係のある反応過程で生成されることが多い。 太陽の中心部で盛んに行われている核融合反応は、大量のニュートリノを生み出し、太陽を中心点とする放射状に広がっていく。 地球上にいる私たちの体には、毎秒10兆個以上突き抜けているという計算になるらしい。
もちろん、ニュートリノが私たちの体を構成する物質と反応することはないので、何も感じないばかりか影響もない。 ほとんどすべてのニュートリノは地球でさえも貫通してしまう。 したがって、太陽が地球の裏側にあって太陽光が見えないような場合、光の代わりにニュートリノを見ることができれば、太陽の方向を正確に知ることができるのだ。
