科学の散歩道
現代物理学入門

素粒子物理学編
ニュートリノの相対論的効果

大マゼラン星雲で超新星爆発が起きたとき、強い光とたくさんのニュートリノが放出された。 およそ16万年を経て地球に届いたこれらは、ほぼ同時に観測されている。 では、ニュートリノは地球までの道のりを光と同じ速さで飛んできたのだろうか?

結論から先に述べておこう。 実は、ニュートリノの質量に関する最近の研究成果から考えてみると、ニュートリノが真空中の光の速さ(c=299,792,458メートル/秒)で飛んできたと思うには無理がある。

ニュートリノには、わずかではあるが、ゼロでない質量が存在する。 1988年以降、スーパーカミオカンデで観測した現象などから、ニュートリノは質量をもつ粒子であることが明らかにされてきた。 さらに実験を重ねて結論の精度を上げる必要はあるが、ニュートリノに質量があることは疑いもない事実となりつつある。

粒子の移動速度が真空中の光の速さに近づくとき、相対論的効果によって、その粒子の質量が増えていく。 例えば、光速度cの90%で走行する粒子は、静止した観測者には質量が2倍以上に膨れ上がって見える。 また、光速度cの99%では7倍以上に膨れ上がる。

これらの質量の増大は、相対論的な効果であって、あくまでも観測者と粒子の相対速度によって現れる見かけ上のものに過ぎない。 たとえ高速で移動する粒子であっても、その粒子と同じ速度で移動する観測者からは、その粒子に本来備わっている質量(静止質量または固有質量という)が観測される。

相対性理論にそのまま従うと、質量のある粒子が光速度cで移動するとき、その質量が無限大に発散してしまう。 光速度に近づくように加速すると、加速のために注いだエネルギーが質量に転換される。 このようなメカニズムによって、質量のある粒子は光速度cで運動することができない。

したがって、ある粒子が光速度cで移動していることは、その粒子の質量がゼロであることを意味する。 光(あるいは光子)や、まだ発見されていないが重力子(グラビトン)は質量がゼロの粒子である。 これらの粒子は、真空中を光速度cで運動している。

超新星爆発によって飛び出したニュートリノの飛行速度は、ほぼ光速度cに近いものの、厳密にはそれを下回っていると考えられる。 しかし、超新星爆発から得た大きなエネルギーは、非常に軽いニュートリノを光速度cに十分近づくまで加速させるには十分だったようだ。


科学の散歩道
Copyright (C) 2003 数理科学研究会 All rights reserved.