電子と陽電子は、ともに質量はまったく同じだが、互いに反対の電気的な性質をもっている。 例えば、電子の電荷がマイナスであれば、陽電子の電荷はプラスである。 ちなみに、陽電子 (positron) の名前は、電荷の符号に由来する。 電子と陽電子のような特徴をもつ粒子の組(ペア)は、粒子と反粒子の関係から理解されている。
素粒子の世界では、すべての物質には、対をなす反物質が必ず存在することが知られている。 電子の反粒子が陽電子であるのと同様に、ミュー粒子の反粒子は反ミュー粒子、ニュートリノの反粒子は反ニュートリノといった具合だ。
理論的に反粒子の存在を導き出したのは、量子力学の建設期(1920年代)に活躍したディラックという名のイギリスの物理学者だった。 ディラックは、量子力学と特殊相対論を結婚させた相対論的量子力学を完成させ、その帰結のひとつとして反粒子の存在を予言した。
無の世界からは何も生まれない。 しかし、一見すると何もないように思える真空には、電磁場の振動によるエネルギーの伝播という重要な性質がある。 電磁場のエネルギーを量子化した光子(ガンマ線)は、ある一定の条件のもとで、質量のある粒子に化けることができる。 質量ゼロの光子から質量のある粒子が生まれたとしても、アインシュタインの理論にあるエネルギー保存の法則には違反しない。
ある光子から粒子と反粒子の対が生まれる現象は、電荷の保存則やその他の物理法則からしても自然に見える。 ある一定以上のエネルギーをもった光子から、例えば電子と陽電子、あるいはミュー粒子と反ミュー粒子といったペアが生成する現象を対生成(対創生ともいう)と呼んでいる。
