電子と反粒子の関係にある陽電子は、電子と衝突してガンマ線というエネルギーに化けることができる。 反対に、ガンマ線というエネルギーのかたまりから、電子と陽電子が生まれることもできる。 前者を対消滅といい、後者を対生成という。
素粒子が生まれたり消滅したりしても、質量を含めたエネルギーの総量は一定で、物理の基本法則が破られるわけではない。 質量が減っても、その分がガンマ線というエネルギーに化けただけで、やはりエネルギーは保存している。 もちろん、電荷の総量など現代物理学で保存すると考えられているものは、すべて保存則が成り立っている。
素粒子の対消滅と対生成がわかったら、粒子加速器のなかで何が起きているのかが理解できる。 実は、電子のような私たちに身近な素粒子からトップ・クォークのような珍しい素粒子を作るのは、素粒子の対消滅と対生成が深く関係している。
世界各地にある粒子加速器では、電子や陽子といった素粒子を加速し、非常にエネルギーの高い状態を作り出している。 特に、電子をある円周に沿って加速させ、それと同時に陽電子を電子とは逆向きに加速させる方式のものが多い。 もちろん、電子と陽電子の道すじは別々だが、ある一点で交差させると、それぞれの素粒子がその点でぶつかり合う。
光の速度に限りなく近づいた電子と陽電子は、非常に大きなエネルギーをもっている。 このような電子と陽電子が出合い頭に衝突し、対消滅すると、非常にエネルギーの大きなガンマ線(実はエネルギーのかたまりなら何でもよい)に化ける。 ガンマ線は単独で大きなエネルギーをもっていても仕方がないので、なるべく安定した質量の状態になろうとする。 その結果、対生成を起こして、例えばトップ・クォークと反トップ・クォークのような珍しい素粒子が発生するわけだ。
