21世紀の技術がどこまで進んでいくのかは分からないが、現時点では、電子や陽子、光子といった小さな粒子をある程度までなら思いのままに制御することができるようになった。 最近よく聞く「ナノテクノロジー」というものの向かっているゴールは、分子や原子といった大きさのスケールで物質を制御することである。
ところが、素粒子の大きさに迫るミクロな世界では、もはやニュートンの力学は成り立たない。 そこで登場するのが量子力学である。 量子力学は、素粒子に特有な性質を記述するのに最も適している。
量子力学の解釈があれこれ議論されていた1927年、ハイゼンベルクは不確定性原理というミクロの世界を支配する法則を発表した。 ハイゼンベルクの不確定性原理とは、
小さな粒子の位置と速度を同時には測定できない。
という内容である。
このことを簡単に説明すると、次のようになる。 まず、小さな粒子の位置を測定しようとして光を当てると、その小さな粒子は光子との衝突によって跳ね飛ばされてしまう。 あまりに小さいため、わずかな作用でも大きな影響となって現れるからだ。 仮に、その小さな粒子から反射して戻ってきた光子を観測したとしても、その場にあったはずの小さな粒子は、すでに速度を変えて逃げ去っている。
このハイゼンベルクの不確定原理は、観測の技術的限界を超えて、実は本質的限界であることが知られている。 位置と速度の同時測定は、観測技術が向上すれば精度が増すといった性質のものではなく、原理的に不可能であるという。
