現代物理学は、原子の大きさはどのくらいかという問いに明確な答えを出せる。 すべての科学者は、ほぼ間違いなく10のマイナス10乗メートル程度の大きさだと答えるだろう。 別の単位で言い表せば、0.1ナノメートル程度ということになる。
この大きさは、例えば水素原子の大きさについて、量子力学的に導いたボーア半径が根拠だ。 原子は、中心に原子核があって、そのまわりを電子が取り囲むような構造をしている。 したがって、原子の大きさというのは、電子の運動の空間的な広がりを表している。
では、原子核の大きさはどのくらいかというと、今度は10のマイナス15乗メートル程度。 この大きさは、SI単位系ではフェムトメートルと呼ばれているが、素粒子物理学などの分野では“Yukawa”という単位も使われる。 その分野の発展に貢献した科学者の名前を単位にするのは、科学の世界ならではのこと。 もちろん、“Yukawa”は湯川秀樹から来ていることは言うまでもない。
原子核の大きさは、粒子加速器を使って原子核同士を衝突させる実験から求められた。 実は、粒子に大きさがあるということは、その粒子の内部に構造があるということと同じである。 つまり、原子核にはクォークとグルーオンの結合という内部構造があって、それらの空間的な広がりが原子核の大きさとなって現れているというわけだ。
それなら、クォークやグルーオンの大きさ、あるいは電子などの大きさはどうなのか? 現時点では素粒子だと考えられているこれらの粒子は、大きさを持っていない。 仮に素粒子が大きさを持っていると考えるのならば、それを真っ二つに切断したとき、いったい、どういうことになるのだろう。
奇妙にも思えるが、エネルギーのかたまりを点粒子のように考え、点粒子の相互作用が物質の構造を形作るという立場からは、このような結論が導かれる。
