光が波動性と同時に粒子性を示すことは、素粒子の性質について興味深いことを教えてくれる。 というのは、光子という素粒子の運動を記述する理論は、完全な波動力学でもなければ、完全な質点力学でもない。 量子力学という理論立てが必要となるからだ。
電磁波という新しい概念で光の正体を明らかにしたマックスウェルの電磁気学は、振動数の小さな(すなわち、波長の長い)すべての光の現象に対しては十分な説明を与えることに成功したが、 振動数の大きな(すなわち、波長の短い)光の現象には、例えば光電効果やコンプトン散乱などのように、理論の範囲を超えるものが現れた。
こうした理論の限界は、原子内にある電子の運動でも見られる。 電子を古典的な粒子と思ってニュートン力学やマックスウェル電磁気学を適用しても、原子の安定性を説明することができない。 原子核のまわりを回る電子はクーロン力による加速度が生じる結果、電磁波を放出する。 その電磁波の分だけ電子はエネルギーを失うから、一定の軌道にとどまることはできなくなって、しまいには原子核に吸い込まれてしまう。
実は、このようなミクロな世界では、電子を粒子のようなイメージで見るのではなく、波動のようなイメージで見たほうが実像に近い。 軌道上を連続的に移動するのではなく、原子核のまわりを電子の波が取り囲んで、定常波となっている。 この結果、軌道の半径がとびとびの値を取るというボーアの量子条件が成り立っているわけである。
